これで今ある駄文SSは全部です。ちょっとずつ増えるかこのまま放置かは今後のモチベーションにゆだねられます;;;;
ここまで読んで下さった奇特なお客様ありがとうございました。
『一生分の』
何処の断片だろうか。
空が燃えるように赤い。
夕日に照らされたオレンジ色の雲が長くたなびき、その上には深い群青色の空が広がっている。
「きれいだな」
あ、一番星見っけ、とはしゃぐ彼は出会ったころの彼だった。
明日カオスのもとへ赴く。
ウォーリアオブライトが皆にそう告げたのはほんの少し前だ。
誰に言われるでもなく、皆は武器の手入れなどをしながら体力を温存するべく野営地にて待機していた。
そんな中、バッツがスコールを外に誘った。
その場にいたジタンは二人を気遣いあえて言及しなかった。
他のメンバーも、二人の仲は周知のことだったので見咎めることはしなかった。
「バッツ、今どんな気持ちなのかな…」
二人が愛し合ってることをティナも知っていた。
「…そんなに落ち込んでいない様子だったよね」
普段ならバッツの行動を事あるごとに避難するオニオンナイトだが、今日に限っては違っていた。
― カオスを倒すことはここにいるメンバーとの”別れ”を意味している。
彼もティナと別れるのが辛いのだ。
ともすれば感傷的になり、明日の戦いに差し支えるほどだ。
自分の気持ちを把握できない少年は、これが恋だと気づくことはなかった。
オニオンナイトは、二人が消えていった断片の先を見遣りため息をついた。
「なあスコール」
「なんだ」
「そんな怖い顔すんなって」
「…」
「折角きれいな景色に出会えたってのにそれじゃ台無しだぜ」
スコールは眉間のしわをますます深くした。
なぜバッツはこんなに平然としていられるのか。
あれほど肌を重ねてきてもやはり自分とは遊びも同然だった、そうとしか考えられない。
この場でバッツを滅茶苦茶にしてやりたいような、凶暴な感情が奥から湧き上がってくる。
バッツはというと、相変わらず優しい微笑みでスコールを見つめていた。
「じゃーもういいよ。スコール、目ぇ瞑って」
ちょっぴり拗ねたような口調でバッツが言った。
「なっ…」
「だーから目瞑れっていってんの」
(何がしたいんだ…?)
「スコール、キスさせて」
「…ふざけているのか」
冗談じゃない。この大人はどこまで自分をからかったら気がすむのか。
「今そんな気分になれな…」
「今じゃなきゃ、いつできるの?」
「…」
「それとももう俺とはしたくない??」
「そんな事は…っ!!」
スコールは声を荒げてしまってから、はっと我に返った。
いつも先に感情的になってしまうのは自分の方だった。
「…好きにしたらいい」
そっぽを向き、そう答えるのがやっとだった。
「そう?」
笑いを含んだバッツの返事にスコールはますます恥ずかしさがこみあげた。
(最後の最後まで俺はバッツにはかなわないのか…)
こんなキスまで許してしまって。
一度でいいから、バッツの本当の心が知りたい。
「スコール」
こっち見て、といわんばかりに両手で顔を固定され向き直された。
至近距離でバッツと目線が合う。
(バッツ…?)
あのときの眼だと思った。出会ったころ、地面に押し倒され身動きができなかった時の。
ただ違うところは、あのときは体が動かなかったが、今はちゃんと動くことだ。
彼の唇が額に、目尻に、優しく降り注ぐ。
頬をなぞり、鼻の頭には戯れで噛みつかれた。
最後に唇。
最初は触れるだけだったが、次第に深く、角度を変え何度も何度も繰り返した。
執拗な口づけに息継ぎもままならず、スコールはだんだん息が上がってきた。
「バッツ、もう十分じゃないのか…?」
「まだまだ」
「…っ」
「まだ足りないよ」
ただのキスにしては様子がおかしい。鬼気迫るものがあった。
「俺の一生分のキスを…スコール、に…」
バッツの頬を涙が伝った。
瞬間、スコールは鈍器で殴られた時のようなショックを受けた。
この世界に来て、バッツと行動をずっと共にして、彼の涙を見たのは初めてだった。
(俺は、バッツの何を見ていたんだ)
彼の細い腰に腕をまわし、きつく抱きよせた。
「…っ。スコール?」
「俺からも、贈らせてくれないか」
そう告げるとバッツは、最初きょとんとした顔で見つめてきたが、次第に微笑みゆっくり頷いた。
一生分のキスを
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ラブラブ前提とかぬかしながら、こんな形のハッピーエンドですみません。
この二人は一緒にずっといるイメージがどうしてもできなかったんです。
でもその分深く愛してたんじゃないのかな。っていうただの妄想です。
85大好きだーーーーー
お目汚しでした