ハイペース!妄想つづき
またふっつりネオチするかもしれないので上げれるときにがんガリますww
りゆざきさん・・・・・涙
拍手ワンぽちありがとうございました!
脳裏に懐かしい旋律がよみがえる。
やさしい、きれいなピアノの音。
まるで子守唄のような、慈愛に満ちたあたたかい音色。
幼い竜崎はそれを聞くのが好きだった。
もっと近くで聴きたくて、部屋に入れてほしいとわがままを言った。
大会が近いから邪魔をしてはいけない、そうワタリがたしなめるのを聞いていたのだろう。
兄は大丈夫だからと部屋に入れてくれた。
いつも遠くで聞いていた兄のピアノを間近で聴ける。
心が躍った。
演奏中はここでじっとしていること。それさえ守れば構わない。
兄は譜面を置きかえ、練習を再開した。
開け放たれた窓。カーテンが緩やかに舞っていた。
穏やかな昼下がりだった。
竜崎は兄のピアノに聴き入っていた。
普段こんなふうに傍にいることは珍しかった。
大抵兄は練習やら勉強やらで多忙だからだ。
もちろん口を利くこともほとんどない。
しかし竜崎は少し年の離れた兄を密かに慕っていた。
いつかじぶんも彼と並んでも恥ずかしくないような、そんなピアニストになりたい。
そして自分をもっと見てほしい。
竜崎は兄の指先をじっと見つめた。
長くて少し節ばった指が滑るように鍵盤を行き来する。
子供心にもそれがとてもうつくしいと感じた。
引き換えに自分の手を見る。まだ未発達の幼い指だ。
これではまだ一オクターブだっておさえられない。
改めて兄との距離を感じ、ため息がこぼれた。
そのときだった。
不意に突風が吹きこみ、ピアノの譜面が飛ばされてしまったのだ。
竜崎は驚き、あわててそれらをつかもうとピアノへ近づいてしまった。
そして悲劇は起きた。
足がもつれ竜崎はピアノに倒れこむようにぶつかってしまった。
その衝撃で鍵盤の蓋が演奏中の兄の指の上に落ちてしまったのだ。
バーンというけたたましい音が響き、ワタリが何事かとやってきたときにはもう遅かった。
何が起きているのか理解するのが恐ろしかった。
自分のせいで
兄は
大事な大会の前日だというのに
(私が 原因で)
乾いた電子音で竜崎は気がついた。
携帯を見ると月からのメールで「これから行く」とあった。
知らない間に眠ってしまったらしい。
全身汗びっしょりで喉がからからだった。
「・・・忌々しい」
吐き捨てると、のろのろシャワー室へ向かった。