『交換』
※いきなりできあがってる設定です
「あんたが持っていてくれ」
そういって渡されたのは彼の首飾りだった。
「いいのか?スコール。これ気に入ってたんじゃないのか」
「あんたに持っていてほしい」
最初は訝しむような表情をしたが、そこまで言うなら、とバッツは片手を差し出した。
無骨な装飾で重苦しい印象を受けるが、手のひらに収まったそれは見かけの割にずいぶんと軽かった。
自分にはまったく似合う気がしない。
なぜ彼がこれを渡してきたのか、バッツは薄々感づいてはいたがあえて考えないようにした。
「サンキュ。でも貰いっぱなしも悪いよな」
にっこり笑うとバッツは自分の両耳に下がっているピアスを外した。
「代わりにこれやるよ。まぁ、スコールに似合うかわからないけど」
まさかバッツの方から何かを渡されるとは思っていなかったスコールはしばらく無言で立ち尽くした。
「ほら、受け取れって」
バッツはスコールの手をとり無理やりこじ開けピアスを握らせた。
黒い革のグローブの中でそれはとても色鮮やかに映った。まるでバッツの象徴のようだ。
少し沈黙があった後、すまない、と小さくスコールが礼を口にした。
「物々交換なんて、なんだか懐かし…」
バッツの顔がわずかに曇る。
クリスタルの輝きが強まり、おぼろげながら現世の記憶がよみがえってきている。
皆、口には出さないがほとんど鮮明に思い出した者もいるだろう。
スコールも、例外ではなかった。
「交換…」
「ん?」
「俺のいた世界には、指輪の交換という儀式があった」
「ふうん。なに?それどんな儀式」
バッツはきょとんとスコールを見つめた。
おそらく彼の世界では存在しないのだろう。
スコールは、しまった、と思ったが時すでに遅し。
好奇心に満ちた瞳がキラキラと輝いてこちらを見つめている。
思いつくシュチエーションは一つしかない。
バッツは興味深深と言った風情でスコールの顔を覗き込んでくる。
スコールは言葉が出てこない。仕舞にはみるみる赤面し、首まで赤くなる始末だ。
「~~~~~~っ」
「なんだなんだ??言えないのか??」
いたずらっぽくバッツが笑う。
(駄目だ。このままでは首飾りを渡した俺の気持ちまで笑い飛ばされ、うやむやにされてしまう)
それだけは嫌だ。
意を決したように、一息つくとぽつりと話し始めた。
「・・・・・・・こん」
「んん?」
「婚約する男女が愛を誓い合った後にする儀式だ」
「!!!」
この答えはバッツの想像のはるか上をいっていた。
…しかも今自分たちがいる場所。場所が悪い。悪すぎる。
次元城だ。
バッツは思わず、昔旅先で見た王家の結婚式を連想してしまった。
今度はバッツが赤くなる番だった。
(こ・・・こいつ気障すぎるありえねぇ恥ずかしい!!)
眼を合わせられず、思わず俯いた先に手の中の首飾りが映った。
今これを持っている事が恥ずかしくていたたまれない。
そんなバッツに気が付いているのかいないのか、スコールはまたとんでもない事を付け加えてきた。
「それだけじゃない。その後誓いのキ…」
「やめろよ!!」
バッツは思わず叫んでいた。
スコールが傷ついたような、怯えた顔をして、ビクリと身を震わせた。
そんな彼の様子にバッツは胸を痛めたが、意を決してスコールを見据え言葉を紡いだ。
「俺たち…そういうんじゃないだろ?」
バッツの言葉はスコールの胸を深く抉った。
整った顔がみるみる悲痛に歪む。
「だったらどういうつもりであんたは!!」
― 俺に抱かれたりしたんだ
スコールが声を荒げる。
バッツは口元を引き締めた。
もしかしたらこのまま泣いてしまうのではないかと思えるほど彼の眼は潤んでいた。
「好き、だからだよ。」
バッツは揺らぐことなくまっすぐスコールを見つめ返し答えた。
「それ以上もそれ以下でもない」
「バッツ…」
「好きだぜ。スコール」
気がつくとスコールはバッツの腕の中にいた。自分よりやや細い腕がやさしく体を包み込む。
バッツの方から唇が重なった。
甘いはずの唇が、今は苦々しく悲しかった。
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自分でも何がしたかったのかよくわからない話です(大汗)
ラブラブ、のはずなんですがーーー;;;